私が所属する薬理研究部では、化合物ライブラリーから薬の種となる化合物を見つけることや、そこから派生して合成された薬の候補となる化合物の薬理評価を行っています。ターゲットとしている疾患は循環器領域。評価には試験管で行うものや培養した細胞で行うもの、動物で行うものなどいくつかのフェーズがありますが、現在は細胞で行っています。
私の役割は、実験の方向性や具体的な実験方法を考えたり、実験で得られたデータの解析や考察などを行うことです。実験で想定通りの結果が出るのは、わずか2割ほど。8割ほどは想定外になることを予め考慮してスケジュールを組みます。想定外の結果が出ても、「なぜそうなったのか」を解明できれば新たな知見が得られたことになります。限られた時間のなかで成果を積み上げていくとこは大変ではありますが、「仕事で研究を行う」うえでの楽しさでもあります。
私が就職活動をしていたとき、興和がアメリカ・ボストンでの共同研究をスタートさせました。そのニュースに触れ、「グローバルに研究活動を行うチャンスがあるかもしれない」と思ったことが、興和に入社したきっかけです。そして入社5年目に、実際にボストンで研究に携わることができました。
世界からボストンに集まった研究者たちは、とにかくポジティブでした。予想外の研究結果に対しても、「おもしろいデータが出た」「こんな使い方ができるんじゃないだろうか」と、前向きに議論するのです。その姿勢は帰国後の今も大切にしています。現在の所属部門である東京創薬研究所には、有機合成や薬物動態など、私とは専門分野が異なるメンバーがたくさん在籍しています。ボストンのメンバーも加わり、多彩なスペシャリストが異なる視点から意見を交わすことは、とても刺激的でこの仕事の醍醐味とも言えます。
社会人になって研究に携わるうちに、「社会に貢献したい」という思いが強くなりました。この目標を実現するためにも、今後は、研究全体の方針を決める仕事などにも携わっていきたいと考えています。
研究チームを構成する部門はそれぞれの役割は異なるが、情報を共有し、常に議論しながら研究を進めている。薬理・合成・薬物動態はそれぞれの専門領域のアイデアを出し合い、薬の種を育て上げていく。研究戦略部は全体としての研究方針を策定。外部機関との窓口役などは研究管理課が、実験動物の管理や倫理面のチェックなどは実験動物管理課が、実験に用いる試薬や機器の手配などは総務部門が受け持ち、研究チームを支えている。
週末にテニスをして体を動かすことは、心と体のリフレッシュにつながっています。研究には思考力や体力も不可欠ですが、テニスをしていることがそれらを下支えしてくれているように思います。心身がフレッシュな状態でいると、頭の回転もずいぶん速くなるような気がします。
高校時代はテニス部に所属しており、ボストンから帰国後、本格的にテニスを再開しました。自己流では上達に限度があると思い、週末にスクールに通うことに。基礎をしっかりと学ぶことで、それまでとは違った上達ぶりを実感しています。平日は夜な夜な動画サイトでプロのプレーなどを見てイメージトレーニングをしています。
所属部署や掲載内容につきましては取材当時のものです。